「どうじて俺は生きているの?」
その答えが、俺はまだ掴めない。
午前5時。日が出る匂いがする。目覚ましがなる。起き…られない。いつものことだ。
俺は低血圧で、超夜型人間。朝なんてこなくていいと思うくらい、朝が苦手。本当は午前6時におきれば電車には十分間に合うのだけれど、俺は一回目覚ましがなったくらいでは起きない。だから、一時間前の午前5時に目覚ましをあわしている。昔は、午前五時に目覚ましをあわせるなんて器用なことができなかったから、いつも君尋にモーニングコールを頼んでいた。因みに、君尋っていうのは俺のダチ。小学生からの腐れ縁で、よく一緒に登校したり、下校したりしている。結構頼りになる奴で、午前五時に目覚ましを合わせるなんて器用なことは、アイツから教わった。君尋は優等生で、いつもクラスで成績トップだ。でも変なことで落ち込んだりする。テストが98点だったり、何もないところで転んで落ち込んだりと、俺はなんでそんなことで落ち込むのかよくわからない。(でも何もないところで転ぶのはさすがにどうかとは思うが。)俺なんてテストの最高点は30点だぜ?
目覚ましの総攻撃で微かに目が開く。このときに起きないと二度寝するので、俺はベッドから起き上がりのそのそと洗面所に向かう。鏡で自分のアホな顔を見て、やっと俺は目をさますんだ。そして冷たい水で顔を洗う。
目を覚ました後は歯を磨く。それが俺なりのセオリー。ここがいつも辛い。下手をすると歯ブラシを持ちながら寝てしまう。だって歯を磨くなんて単純作業だもの。洗面所から出て、また無駄に広い俺の部屋に来ると、学校へ行く準備をする。
俺は一人暮らし。部屋は2DK。一人暮らしするには広すぎると思わないか。両親は居ない。別にギャル男になってから両親とうまく噛み合わなくなって・・・なんていうよくあるテレビドラマの設定とは違う。俺、岡田裕輔は、昔は滅茶苦茶なマザコンだった。お母さんが好きで、お母さんに甘えているとお父さんが寄ってきて、お母さんは俺のものだー!なんていいながら俺とお母さんをひっぺがす。そしてお父さんはお母さんに抱きついて、そんなお父さんの背中を俺は精一杯爪をたててひっかくんだ。お母さんを返せーなんていいながら。お父さんとお母さんはすごく愛し合っていた。お互いがお互いを好きで好きでたまらないようだった。俺のお父さんは、ちっぽけな製鉄工場で働いていて、それだけじゃ家庭にお金がまわらないから、お母さんもパートやアルバイトをしながら働いていた。だから、一人でいるのは慣れていた。
そして、あるときお母さんが死んだ。急性心不全だった。それからのストーリーはもうわかるだろ?お父さんはお母さんの後を追っていった。俺は一人ぼっちさ。両親が一気に死んで、まだまだ小さかった俺は、なにがんだかわからなかった。寂しかった。両親の名前をよんでもただ俺の声が響くだけだった。一日中泣いていたときもあったし、一日中ぼーっとすごすときもあった。でも、こんなことをし続けていても何もかわらない。そう気づかせてくれたのは、君尋だった。
君尋とであったのは小学1年のときで、まだなにもない円満な家庭を送っていた俺は、妙に君尋と馬が合った。それから、結構一緒に遊ぶようになって、仲良くなった。それで、小学2年生になって親が死んで、俺は学校に行かなくなって、一ヶ月くらいたったときに、君尋が家に来てくれた。それから、まぁ、なんていうのかよくわかんないけど、このまま学校に行かないで部屋にずっと居るのも寂しいと思って、学校に行くようになった。君尋とは腐れ縁なんて言ったけど、実際はそんなもんじゃない。俺は君尋に助けられたんだ。
たぶん人は、自分がどうしようもできないような世界の動きを感じたとき、何をすればいいかわからなくなる。泣いても、叫んでも、怒っても、何も変わらない。そのとき、人は死のうとおもうんだろう。俺はまだ死ぬことをしらなかったから、生きていられたんだ。人が生きるということと、死ぬということは、紙一重だ。
俺は、こんなことを思うとき、どうしようもなく死にたくなる。どうして俺が生きているかわからなくなる。気づくと、部屋がズタズタになっているときがある。それは、無意識に物に当たったからだ。そんなときは、ズタズタになっているこの部屋に謝りながら泣く。大丈夫。この部屋には誰もいないんだから。思う存分泣けばいい。
どうして俺は生きているんだろう。ただ我武者羅に生きてどうするんだ。人生なんか悪いことばっかじゃないか。それでも、俺はどうして生きているんだろう。
ああ、まただ。また思い出しちゃったよ。今日は学校行くのやめようかな…。そんなときに限って、携帯の笑点の着メロが鳴り響く。誰だよまったく。少しは感傷にひたらせてくれ。
「もしもし、俺だけど。お前まだ部屋なの?遅れるぞ!」
君尋だった。やっぱり俺たちは腐れ縁なのかもしれない。
「今出るよ。お前はどこにいんだ?」
「お前んちの目の前だよ!早く出て来いや」
マジかよ。まったく、君尋は俺の母親か。
「先に行ってていいよ!お前まで遅れんぞ!」
「わかったー」
おい。そこは待てよ。なんなんだ。
急いで制服を着る。アイツを遅らせるわけには行かない。何故ならまた落ち込むからだ。アイツが落ち込むと俺がめんどくさい。だから急ぐ。
急いで部屋のドアを開ける。ドン!!ってすごい音がしたけれど、気にしない。因みに俺の家はアパートの3階で、急ぐにはエレベーターなんか使わないで非常階段を使う。やや腐りかけの非常階段をドタドタ走り、さぁダッシュしようと思ったときに顔を上げると、君尋がいた。
「いや、何で居るの?」
「いや別に。」
「別にじゃないだろこのスカポンタン。先にいけっていったろうが!!」
「だって一人で登校すんのってなんか悲しいじゃん。」
「そんな理由かよー!!」
そんな会話をしながら、俺らは急いで学校へと向かう。もちろん学校には遅刻し、教師に怒られ、君尋は落ち込む。そして俺はそんな君尋をなだめるのに1時間ちかくかかった。
僕らは、このどうしようもない毎日をこんな風に過ごしている。きっと、生きる理由なんて必要ないのかもしれない。ただ毎日をどうにか過ごしていけば、それが俺の人生になるんだろう。それでいい。これからもっと辛いことがあると思うし、これからもっと両親のことも思い出すだろう。でもどうにかやっていける気がする。君尋と一緒なら。
END
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