事故があった。七台の車がジャンクになった惨事だが、どうということはない。単なる一つの事故だ。
ロイはその事故を覚えていた。正確には、その事故を目撃し、驚愕して駆け足で警察に向かったという外国人のことだ。男はろれつの回らない舌を使い、凄まじい事故の詳細を語ると、すぐにパトカーと救急車と消防車と、それからテレビ局と国家自動車監督局にまで連絡をしようとして止められた。警官は落ち着いた顔で男を誘導し、建物の外まで歩かせると、その背中に向けていった。「事故は警察の仕事じゃないんだ。管理局へ行ってくれよ」
たまたまその警官がロイの友人で聞けた話だが、彼によると、その驚きようといったら、ハルマゲドンがやってきたのと変わりがないというのだった。交通事故管理局の回転ドアを抜け、正面ロビーの受付嬢に事故を知らせた男だったが、ここでは対応しかねるといわれ、わざわざ九階の事故処理部まで駆け込んだ。ロイはその事故の通報を聞いて単純な報告書を作り、すぐに報道局へと送ったが、七時のニュース番組で一回だけ流されると、それきりだった。いまのニューヨークには、一つの事故を二回も見たがる暇な人間などいない。
ロイは男の考えがわからなかった。
たかが七台の玉突き事故だぞ?
その事故のために忙殺されている人間がいる。管理局の職員だ。報道局はテレビ番組のための事故資料を求めているし、現市長は続発する轢死事故、交通事故のすべてをデータとしてまとめることに熱心らしい。管理局にいつも激励を送ってくるのだ。ロイは五番街の道路を飛ばしながらステアリングを握り、カー・テレビはつけずにクライスラーを走らせていた。事故多発区間のエンパイアを避けて、交通事故管理局のビルへと向かっているのは、減らない仕事をはじめるためだ。彼はため息を吐いた。
交差点に差し掛かったときだった。横から車が飛び出してきて、ロイはとっさにブレーキを踏んだ。信号が赤になるより早く、右から青のフォードがクラクションを鳴らしながら前方を暴走していった。八十マイルは出ている。三秒ほど送れて赤のトヨタが高速で走り過ぎようとするが、それより速くロイのクライスラーと並走していたシェヴィが発進しようと走り出していた。トヨタのフロントがブレイザーのドアにまともに突き刺さろうとして、耳障りな衝突音が通りに鳴り響く。
シェヴィはボディ・パネルを凹ませて横転し、トヨタはいきおいよく通りを回転しながら歩道へと打ち付けられた。何人か巻き込まれたようだ。少数派の見物人が集まってくるが、ほとんどの人間は興味も示さず、右手に持った小型画面に視線を落としてその場を離れていく。彼らもまた、携帯テレビを楽しみながら自分たちの仕事へと向かう途中なのだ。
ロイは不愉快だった。自分の仕事が増えたことにうんざりした。もううんざりしないと決めたのに、それでも事故が起こるからだ。彼はできればそうしたくなかったが、それが仕事だったので、車内映話の受話器を取った。
映話は管理局の通報処理部にすぐ繋がるように作られていた。画面にオペレーターの姿が現れ、一瞬その顔がばらばらになるが、それが収まるとこう対応する。『交通事故管理局です。通報ありがとうございます。……あら、ロイ。あなたがどうして?』
「五番街と東十七丁目の交差点で事故だ。第三者の巻き添えもある。"
が、彼女はその気がないようだ。
『朝から事故に? あなたも大変ね』
「スーザン」ロイはいらだちを込めていった。
『わかってるけど……』彼女は語気を弱めていった。『わたしも大変なの。少しぐらい、気を抜かせてもらってもいいでしょう?』
「その気持ちも分かるが、俺の場合は気が抜けないんだ。ニューヨークの道路で車を停めてるんだぞ。いつ追突されるかわからない」
『あんな車、まだ使ってるの?』
「オンボロだって? 映話はあるし、最近テレビをつけたんだぞ。ヘリは?」
『手配したけど……』
「ありがとう。それじゃ」
ロイは彼女の返答も聞かずに受話器を置いた。すると、自動車と人の話し声でやかましい喧騒の中に、ヘリコプターのローター音が介入してくるのがわかった。もっとも街のあらゆるところで飛んでいるものだが……ロイは仕事を一つ終えた気分になって、清々しくなるかと勘違いした。だが、実際に彼に押し寄せたのは、自分が仕事に支配されているような感じだった。彼はそれを掻き消すように乱暴にシフト・レヴァを操作し、車を発進させた。
上も見ずにまっすぐ車を走らせた。管理局の仕事の手順はすべて熟知しているから、いまさら見てもしかたがない。バードと呼ばれるヘリコプターが飛んできて、事故の映像を簡潔に撮ると、すぐに清掃車が変わって姿を現す。清掃局配備の、ブルドーザーを改造したものだ。
清掃局に配備されている車のガレージはNYのあちこちにあって、街の空を飛びまわる管理局のヘリが察知するか、あるいは第三者の通報によって事故発生を知らされると、すぐに命令が下り発進する。清掃車はキャタピラで地面をゆっくりと移動し、大破した事故車両を適当なところに押し寄せ、そのままぺちゃんこに押し潰す。清掃局と交通事故管理局の共同作業。あとは放置しておくだけで、夜になれば局の人間が勝手に残骸を処分してくれる。毎日事故は起きて、路肩は車の死骸で溢れかえってしまう……そんなことはありえない。しかし現実にあることだ。
いかれてる。ほんとうに、この街はどうなってるんだ?
交差点を曲がり、彼はクライスラー・ルバロンの運転席から管理局のビルを目視で確認した。今日も仕事がはじまる。アクセル・ペダルにかけた足を緩め、速度を落として駐車場に車を乗り入れる。《58》と描かれたスペースにクライスラーを駐車してドアを開け、ロイは車から降りた。事故にあう心配はなくなったが、代わりに膨大な量の交通事故と対面しなければならない。彼は一歩踏み出すごとに五メートル以上進むつもりで急いでビルへと向かった。エレベーターは駐車場のすぐ近くにあった。
高速エレベーターは一気に上がっていった。眼下に広がるNYの街を窓から見渡す暇もあたえられず、ロイは音とともに開いたドアを通り過ぎた。廊下に出たところで、事故処理部第二室のプレートを見つけ、そちらに向かって走る。彼は腕時計を見た。出勤に五分遅れている。あの事故のせいだ。手中のテレビに視線を落としていた職員二人と肩をぶつけたが、ロイはなにもいわずに急ぐことにした。声はなかった。
「ロイ、貴様六分も遅刻したな! その間に事故が三件は処理できるぞ」
オフィスに入るとすぐに怒号が飛んできた。もういいかげん頭の禿げ上がっている上司のネフだ。彼は入口の前に立ち、部下の失態を責めるためにロイを睨んだ。
「やあネフ。……五分だよ」
「見ろ。もう六分になってる」そういって彼はロイに詰め寄って袖をまくりあげ、腕に巻いた時計を見せた。
「安物を使うからだ。狂ってるぞ」
「早く仕事をしろ!」
ロイは特に悪いと思っていない表情で自分のデスクについた。ネフのいうとおり、既に二十三件もの事故が知らされ、ロイのコンピュータの中に入っていた。すべてが未処理だ。一つ処理するのに平均で二分。ネフの計算は確かなようだ。コーヒーが欲しかったが、準備時間までに来なかった自分の落ち度だと諦め、彼は喉を乾かせたまま仕事をはじめた。
轢死が十二件。平常どおり数が多いが、昨日より二件少ない。管理局ビル前、ウォール街、やはりエンパイアの近く、他にも同一の事故。どういうわけか、一番発生件数の多い事故は轢死だ。これを事故というか、故意の事件というか、それを論じることにロイはまったく興味がなかったが、数の多さは疑問だった。しかも管理局が調べた事故についての資料を見ると、轢死事故は実際に知られているよりも三倍の数が発生しているという。原因はいまだ不明で、毎日それを思案し討論するテレビ番組に誰もが注目している。どうせ答えはでないだろう。わからないのだ。
常識的な衝突事故が五件。高速道路上での派手な大規模事故が朝から二件。ストリートレースや強盗など、特殊な事情の変り種が四件。これが朝六時までに街中から集められた事故の数だった。だが、実際には違う。無視されたものを考えれば、これ以上の悲劇的事故が起こっているはずだ。轢死がそうであるように、この街の人間はニュース番組の速報は見るが、現実の事故に観賞する価値など見出していないのだ。
仕事をいつもどおりこなしていく。そろそろ辞めどきかもしれない、と思うこともあった。しかしこの仕事を辞めたとして、他にどの職業に就く? 報道か? 清掃局か? やはり事故と深く関係することだ。管理局の人間である証明を捨てる以上、まだ事故の近くにいたいと思うわけがない。そうなると家から一歩も出られないことになる。もしかすると下手糞なドライヴァが自分の家に車を突っ込むかもしれない。いずれにせよ、自分は仕事に――事故にとりつかれている。
いや、待てよ? とりつかれているといえば……ロイは同僚だったクリスのことを思い出した。処理部の仕事仲間だったクリス・テイラーは笑顔を絶やさない好漢で、しかも仕事を確実にこなす尊敬すべき人物だったが、去年の秋に死亡した。轢死だった。
ロイはその事故を扱った。資料として仕上げるのに二分間を使ったが、葬儀を挙げたい気持ちを引っ込めるのは二日もかかった。その事故は平凡な日常の中の一要素に過ぎない。テレビ視聴者の好奇心と興奮を満たすための派手な見世物だった。
そしてクリスはこんなことをいった。自分が仕事にとりつかれていると思うときがある。
なんだって? ロイはその言葉を理解できず、訊ねた。彼は仕事に対して、軽視をしない範囲で楽観的に向き合う種類の人間で、それが苦痛や疲労の種だというのは馬鹿だと口にしていた。クリスからそのようなことを聞かされるのがなにより不思議だったし、弱々しい口調も気になった。ロイは彼の答えを待った。
俺は事故がないと生きていけないのかもしれない。毎日事故の夢を見るんだ。クリスの声はどんどん小さくなっていった。
反対にロイは力強く返答した。俺も見るよ。こんな仕事なんだ。当然のことさ。
クリスは彼をじっと見た。
「なあ、ロイ」クリスがいった。「どうして事故は起こるんだろうな」
ロイは即座に返答しなかった。だが、考えるのにそれほど困難を要求する話題でもなかった。「どうして、だと? 安物の車を使うからさ」
「真面目に答えてくれよ」強い調子でいったクリスに、ロイは驚いてその顔を見た。他人に答えを求める、怯えたような目が彼を見ていた。なぜそんな目をしているんだ? そう問いかけたかったが、クリスが先に口を開いてしまう。「……ロイ。もしかすると、事故にとりつかれているのはおれたちじゃなく、国民かもしれないぞ」
少しばかり難しい問題だった。「どういうことだ?」
「国民は事故を求めてる。毎日の激務の中の、一服の清涼剤だ」
「わかるよ。そのために俺たちは事故を資料にしてる。毎日だ」
「テレビのためにな」
「そう、テレビ番組だ。ニュースだよ。別にやましい仕事じゃない」
「そんなことはいってないさ。ただ……ほんとうはテレビが……」
クリスはそこで言葉を区切った。そのとき、ロイは彼の顔の中に友人の思惑を垣間見た。進んではいけない場所に踏み込んでしまい、自分がもう戻れないというような悲惨な暗さだった。話が中断したのではないと思って、ロイはクリスの顔を覗き込んだ。彼の敬愛する同僚の目が変わっていた。どこを見つめてもいない空虚な瞳だった。クリスはゆっくりと答えた。
答えた。
あれ?
次の言葉が思い出せない。ロイの手はいつのまにか止まっていた。キーボードを叩いて事故を書き出す指と、画面を追う視線。それらが停止して、過去の崩れた記憶に戸惑っているロイがいた。あのときクリスはなんといったんだ? クリスはどんな言葉を残した? 俺はそれを覚えていない。あんなに尊敬していた同僚なのに。事故の知らせを聞いて、倒れそうになったぐらいだ。クリスはなにをいったんだ?
「ロイ!」
荒々しい大声が割り込んできて、ロイはオフィスに戻ることができた。椅子に座っている自分を確認した。声の出た方向に振り向くと、ネフが悠然と立ち、ロイを高圧的に見下していた。「眠っていたのか? ずっと寝たいか?」
「あいにく睡眠は足りててね」
「だったら仕事をするんだな」
彼はそう吐き捨てると、自分の机に戻っていった。ネフの背中をロイは見なかったが、同時に画面に映し出される事故の詳細も気にしていなかった。彼はどこでもない空間の一点を見ていた。
俺は悩んでる。苦しんでる。困惑してる。どうしてだろう? 繰り返してきた事故の事務的処理のことを考えて、疑問に支配されている。その疑問の内容すら理解できない。ロイは動けなかった。もう思い出せないことを思い出そうとして。
まずい。止めるんだ。個人的議論の時間は終わりにしろ。仕事を再開しなければ。
ロイはクリスのことを忘れようとして、それをむりやり影に追いやった。あの空ろな瞳が彼を見ていたが、ロイの瞳はすでにコンピュータへと戻り、そこから離そうとしなかった。すると、彼の友人は帰っていった。それは過去にそうだったというだけの関係だった。
なぜか仕事が早く終わった。少なくともロイはそう感じていた。夜の八時までの事故処理。食事の休憩時間を入れて、朝の六時五分から十二時間弱の働き。疲れは溜まっていない。とくに肩が凝っているという不快な感じもしない。寒くも熱くもない。なにも感じられなかった。それらに疑問を持ちさえしなかった。仕事が終わってコーヒーを飲んだあと、ロイは廊下を歩きながら時計を見ていた。三十分をいくらか回っていた。
帰りのエレベーターの速度は遅く感じられた。その代わりにNYの夜景を眺めることができた。ロイは思った。街は美しいが、あの中ではいまでも数十人か、あるいはそれ以上の人間が交通事故で死んでいる。しかし悲壮感はなかった。そこには交通事故管理局と、報道局のタッグにおける軽快なニュース番組があるだけだ。帰宅中にはニュースを見ながら帰るつもりだった。朝の出勤時間帯の、あの忙しい中でテレビを見ている暇はないし、内容が頭に入らない。事故を見るときは――つまりテレビの中で見るときは――じっくりと楽しんで、画面から目を離さず観賞するのがいい。
駐車場に着くと、ロイの目の前を車が何台か通り過ぎていった。職員の車だ。去年の秋までは、その中にクリスの白いクライスラーもあるはずだった。あの車はクリスが死ぬ一週間前、新しいコルドバを買ったということでロイが貰い受けた過去の車だった。車体は綺麗に磨き、クリスがそうしたように、ロイはクライスラーを大事に乗っている。白のルバロン。記憶と一緒に残っている現実。
クライスラーの前まで来たとき、ロイはクリスが帰ってきたことを知った。脚の動きが止まり、ロイの車――かつてのクリスの車――と対面し、停止する。彼は車を見つめる。
クリスはルバロンにカー・テレビをつけなかった。最後まで絶対に拒否したのだ。国民の大半がそれを楽しみ、管理局の人間にも例外がなかった、ニュース番組をじっくり楽しめるあのテレビ。同僚から進められてもクリスは断った。あの嫌味のない笑顔で、冗談など交えつつ丁寧に。
彼はなぜ拒んだのだろう? カー・テレビはいまや、デトロイトの工場から出た時点で、あらゆる車に装備されている常識的なものだ。クライスラーを選んだのは、一つの画面もついていない中古車が必要だったからか? 仲間からテレビの装着を話されたとき、クリスはこうもいっている。「仕事でもコンピュータだぞ? もうテレビ画面は飽きてるよ」
理由はほんとうにそれだけか? いまさら考えて彼の意思がわかるはずもないが、クリスとルバロン、そしてテレビの関係になんらかの意味が隠されていることは確かだと思った。忘れられた言葉と、残されたクライスラー。ここにどんな秘密が? 俺はそれを掴むことができるのか? クリスが望んでいるとしたら、俺はそれを達成しなければならない。自分に言い聞かせると、ロイはその考えを口にしていた。
クライスラーを見た。四つの四角いヘッドライトとスモールライト。小型高級車のルバロンは無表情にロイを見返していた。クリス。クリスの車。この車に手がかりあるかもしれない。どこかに彼の意思を残しているかもしれない。
ロイは問いかけた。
「おまえはなにを知ってる?」
答えはない。
「なぜテレビをつけなかった? クリスがおまえに乗っていたのは? テレビが嫌だった? それとも……」
そのときだった。突然気持ちが変貌して、自分のしていることの馬鹿らしさに笑いたくなった。同時に辺りを見回すが、駐車場に残っている車は少なかった。電灯も消えて、駐車場は暗くなっている。空も街も黒かった。ロイは一通り見渡したあと、こみ上げてきた笑いを惜しまずに外に出した。俺は馬鹿か?
振り返って、クライスラーを見た。歩み寄ってドアを開ける。シルバーの豪華なシートに、メーターの並ぶインストゥルメント・パネル。いい車だ。それは間違いないが、ここにクリスの遺志はない。そんなことはわかっているはずだった。だが、現実にロイは答えのない質問をした。大笑いだ。運転席に座り、彼はエンジンをかける。ステアリングを握る……これだけじゃない。ロイは右手をコンソールに伸ばした。忘れてはいけないことだった。
『……九時のニュースです。今日も事故が多い一日でした。エンパイア近くの高速ではまたも五台の衝突……』
スピーカーから声が流れ、次にニュースを読み上げるアナウンサーが画面に現れる。ちょうどニュースがはじまる時間だった。ロイはアクセル・ペダルを踏み、クライスラーを駐車場から発進させた。家に帰るまでのあいだ、これで楽しく過ごせるということだ。自分が担当していない事故を知ることも少なくない。
ニュースは絶え間なく続いた。事故、事故、事故に続く事故。タンクローリーと普通車数台による悲惨な衝突、救急車による轢死事故、ストリートレーサーたちの哀れな末路、なんでもない交差点での一般的な衝突事故。まだまだ量はある。
信号無視の車による五件の轢死、高速道路から落下したバス、変わったところでは落ちてきたボートが原因で起きた事故もある。数はたいへんに多く、その種類は豊富で、見ていて飽きることがない。やはり、テレビは面白い。携帯テレビなら歩きながら観賞できるし、車に乗ってもカー・テレビがある。こうしていつでもどこでもテレビが見れるということは、ほんとうに喜ぶべきことだ。ロイはまったく実感していた。なにもおかしくはない。
事故だけじゃない。テレビはいいものだ。情報番組もあれば、趣味の番組もある。調子のいい曲を聴きたいのなら音楽番組、映画もいい。だがなにより面白いのはやはりニュースだ。だがそれら以上に素晴らしいのは、いうまでもなく、テレビだった。そのとき鈍い音が聞こえ、少しだけ車が揺れた。続いてなにかを引きずるような音がしたが、それもすぐに消え去った。
ごみ袋でも轢いたか? なんにせよ、テレビを見ているのだから確かめる暇はない。
1ページ(全1ページ)