Another fantasy 第1話

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「まだ朝はえーから寝てんじゃねぇかぁ?」

 リクは冗談交じりに言うとさっさか中へ入っていく。

「あ!ちょっと待ってよ!」

 クイットと僕はあわてて後を追う。

 洞窟内は暗くじめじめしており、よく見えない。

「ケイ、光球。」

 リクが言い、僕はうなずくと、手を合わせふわりと離した。

 小さな光の球が生まれる。

 僕はそれを3つ作り、それぞれの頭上に浮かべた。

 おかげで結構明るくなり、辺りを楽に見渡すことができるようになる。

「さすが、魔法使えるやつは違うな。クイットはこの光球出すの苦手でいっつもまいってたんだわ。」

「うっさい!私は精霊使いなの!精霊魔法がうまく使えればそれでいいんだから!」

 クイットはリクに食って掛かる。

 そうなのだ、クイットは精霊使いだったんだ。

 これも昨日バーで夕食をとりながら聞いたんだけどね。

 精霊使いになるには精霊文字の縫いつけられた腰巻、そしてウサギの耳、それから精霊石と呼ばれる精霊の力が宿った石3種類以上が必要とのこと。

 これを身につければ精霊の力を操れるようになるという恩恵が受けられる。

 といっても才能とかの問題があり、才能のある人は水や火なんかの強そうな精霊が数対操れるらしいけれど、才能のない人は泥の精霊とかいう微妙な精霊を少ししか操れないらしい。

 それで精霊の形には大まかに2種類あり、火の精霊を例として出すと、1つは火そのもののような見た目をしていて、比較的力の強いタイプ。

もう1つは人型など生き物の形をしており、会話や意思疎通のできるタイプ。

 つまり火の精霊で言うと火をモチーフとした人や獣のようなものを呼び出せるらしい。

「でもよ、こいつったら微妙な精霊しか呼び出せねえんでやんの。しかもこいつの言うことまったく聞かねえんだぜ?まぁ一応光の精霊はちゃんと使えるんだけどな。」

 と昨日リクが言っていた。

 クイットが使えるのは光の精霊、そしてもう一つは始まりの精霊と名乗るよくわからないヤツらしい。

 クイットが使う精霊はどちらも人型で、会話ができるから比較液扱いやすくはあるらしいけどクイットの魔法の腕はあまりよろしくないようだ。

「ったく!そんなこと言ってる場合じゃない!早く行こ!」

 クイットはリクを突き飛ばすと僕の腕をつかんでぐんぐんと先へ進んでいく。

「お?い、待てよ?。」

 そう言って駆け寄ってきたリクだが急にクイットが立ち止まったせいで思わずこけそうになった。

「何だ?急に止まんなよ。」

 そうむっとした声を上げたリクだが僕らの目の前の光景を見て、目を瞬いた。

 僕らの前には本来の道であろう道が真っ直ぐに続いていたが、壁にぼこぼこと穴がいくつもできていたのだ。

「なんだぁ?この穴。もしかしてあの変な音が関係してるってのか?」

 さすがシーフというべきかリクは早速穴を点検しに行った。

「う?ん、まだぽろぽろ崩れてるから最近できたもんじゃねぇかな。これは面倒なことになってきたぜぇ。」

 いくつか穴をチェックしながらそう言ったリクだが急に動きを止めた。

「おい、ちょっと静かにしてろよ。」

 僕はそう言われ思わず息を止めた。

 するとどこか遠くからたくさんのものが動き回るようなカサカサという音が聞こえた。

 僕らは瞬時に青ざめる。

「お、おい、これヤベェかもしれねぇ。今の音からすると結構な数だ。」

「で、でも音の正体が何か確かめてこないといけないんでしょ?」

 リクとクイットがこそこそと言う。

「とりあえずは一番奥まで言ってみようぜ。」

 リクが提案し、僕らはとりあえず前へと進んだ。

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 どれくらい経っただろう、急に道が開け広い場所に出た。

「たぶんここが一番奥だ。道が広げられてなかったらの話だけどな。」

 今までまっすぐ歩いてきたけど、奥に行けば行くほど横穴の数は増えていった。

 一部道が無理に広げられたようなところもあったし、無理やり削られたような壁もいたるところにある。

 やはりここには大きな何かがいるんだ!

「確かここは、前きたときは広いホールみたいになってた。そんでここに一番たくさんきのことか薬草が生えてるんだ。」

「でも確か道中にもきのこ生えてたはずだろ?それが一つもなかったな・・・。」

 クイットの言葉にリクが首をかしげた。

「とりあえずこの部屋調べようぜ。ケイ、お前この部屋全体明るくできるか?」

「うん。たぶん、できる。」

 僕は手を合わせ、さっきよりゆっくり、大きく腕を広げた。

 するとまばゆい光を放つ大きな球ができあがる。

 そして僕はそれを天井のほうへと上昇させていった。

 徐々に部屋の全貌が明らかに・・・。

 そして僕らはまた目を見張った。

 その広い部屋には先ほどまでのような人の手である程度整えられた道はなく、代わりにおびただしい数の穴が壁一面に開いている。

 僕らはきょろきょろと辺りを見回しながら部屋の真ん中辺りまで行ってみた。

 振り返ると僕らがやってきた道の上の壁にも穴が大量にできている。

「うげぇ、なんか妙にきもちわりぃ光景だな。」

「ほんと、なんか出てきそう。」

 リクやクイットの言葉に僕は大いにうなずいた。

 さっき一回かさかさ音を聞いただけでさっきからは何も音がしない。

 それに生き物を何も見かけなかった。

 モンスターの1匹くらいは現れるだろうと思っていたのに。

 何かずっと見張られているような気がして、僕の背中を気持ちの悪い汗が伝った。

「ん・・・なんか音がしないか?」

 リクが目を閉じ耳を澄ました。

 僕もそうしてみる。

 カサカサカサカサ・・・・

 聞こえてきたのは例の音だった。

 そしてその音はどんどんと大きさをましていく。

 僕らは思わず身を寄せ合った。

 何か大量のものがこちらに近づいてきている。

 僕は特に害のない妖精みたいなやつがひょっこり出てくるんだったらいいんだけど、と突拍子のないことを考えて首を振った。

 だって妖精はカサカサなんていわないもの。

 そうそれはまるで台所なんかに出現する茶色くってテカテカした虫を彷彿とさせるような・・・。

 そして目線を上の方に開いた穴に向け、僕は息が止まった。

 上を向いたまま固まっている僕を不審に思ったのかリクが素早く上を向き、見えたものを認識した途端、まだつぶったままだったクイットの目を手で押さえた。

「ふぇ?!」

 いきなり当てられた手に驚きクイットがすこし大きな声を上げる。

 そして次の瞬間一体しかいなかったそいつがクイットの声を聞いたからか身の毛もよだつような声を上げた。

 その後僕が見たのは地獄のような光景。

 そう、巨大なあのアレ(名前の方は自主規制)が大量に穴から現れたのである。

 僕は一瞬の間にいつぞやに見た冒険者用雑誌での目の前に現れたそいつらの解説を思い出した。

 そこにはこう記されている。

『皆さんは史上最凶とも呼ばれるモンスターを知っているだろうか。

 そう最“強”ではなく最“凶”だ。

 それは最も遭遇したくないモンスターと言っても過言ではない。

 その名も「ジャイアントG」。

 名前だけだとどんなものかぱっと見わからないだろう。

 ジャイアント、それは大きい、巨大な、という意味合いを持つ。

 そしてGというのは何を意味するのか。

 それは誰もが知っており、誰もが忌み嫌うあの虫の略だ。

 食べ物がある場所に現れ、茶色くてかてか光るボディーに、ひょっこりと生えた触角。

 ここまで言えば誰もがわかるだろう。

 名前を載せる勇気が私にはないため、ここにその虫の名を書くのは控える。

 そして、皆さんにお分かりだろうか。

 巨大なGの恐ろしさが。

 そう、見た目だけでも身がすくみあがるが、一番恐怖が増幅されるのはそいつらが立てる音がある。

 普段はGの足音が聞こえるなんてことはまずないだろう。

 漫画なんかではカサカサという音で表現されているが、実際そんな音が聞こえることはない。

 家にいたらカサカサと音がした。

 そこでGを連想する人はまずいない。

 しかし、ダンジョンの中では別だ。

 カサカサという音を聞いたら、それはもしかするとジャイアントGかもしれない。

 ちゃんと心を決めて前に進まなければ暗がりからそいつが出てきた途端卒倒してしまう危険性がある。

 それほどまでにヤツのビジュアルは凶暴なのだ。

 さらにモンスター化したヤツは雑食である。

 突如対象にダンジョンに押し入り、そこに住むモンスターを食い荒らしたという報告もいくつかあるくらいだ。

 そして死体も生きているものもやつらにとっては関係ない。

 なんにせよすぐに食らいつき、食す。

 何せ彼らは生きるのに必死だ。

 仲間が多くなかなかえさがまわってこない。

 食事はすべて早い者勝ち。

 その必死さゆえにとてもしぶとく、また従来のGと同じくして大変に生命力が強い。

 さらに殺気を察知する力があるようで倒そうと剣を振りかざしでもすれば、今度は顔面に飛んでこようとするだろう。

 そう、彼らは人間が自分たちの見た目を恐れていることを知っているからだ。

 そして、どこの部分が一番苦手なのかも。

 さて、長々と語ったが、もし遭遇すればどうすればいいのかを記しておく。

 やつらは硬い装甲をもち剣など刃物での攻撃でダメージを与えるのは難しい。

 一応足の密集したほうはそこまで硬くないがそこを見てしまえば攻撃どころではなくなるのが必須だ。

 一番有効なのは炎での攻撃だろう。

 やつらは火を恐れる。

 火で攻撃を仕掛ければ、あっさりと退散してくれるはずだ。

 火を魔法で出す場合はできる限り詠唱やチャージが少ないものにするのがよい。

 なぜならやつらは魔法を使おうとする際の隙を突いて飛び掛ってくる可能性があるからだ。

 なんにせよ、普段から虫への耐性を上げておくに越したことはない。』

 というように記載されていた。

 僕はあまりにその記事が強烈だったため今でも内容は鮮明に覚えている。

 そしてこのモンスターは一番敵にまわしたくなかった。

「ちょ、何っ・・・むぐ!」

 なおも喋ろうとしたクイットの口をリクがふさぐ。

「お前は見ないほうが懸命だ、絶対に目を開けるな。喋るんじゃねーぞ。」

 リクはそういうとゆっくりとクイットから手を離した。

 クイットはおとなしく目をつむり耐えている。

「で、どうするよ?」

「こいつら確か火が弱点なんだ。僕は一応火の魔法は使えるけど、魔法を使おうとすると飛び掛ってくるらしい。」

 僕が言うとリクはマジかよ、と顔を引きつらせた。

 そう言っている間にもGたちはものすごいスピードでこちらへと迫ってくる。

 もう部屋中の穴という穴からやつらは数限りなくあふれ出ていた。

「ね、ねぇ、もう我慢できないんだけど!」

 クイットがまぶたを震えさせて言った。

 こいつらを見ていないからそんなことがいえるんだよ!

 絶対目を開けたら後悔する。

 でも目をつむっているのも怖いのだろう。

 全ての方向からカサカサいう音が聞こえているのだから。

 そう、逃げようにも既に僕らは取り囲まれていた。

「ケイ!とりあえず魔法使え!」

「わ、わかった。」

 こうして僕は魔力を火の力へと変換する。

 魔法を使うには魔力を自分の力で変換する方法と、詠唱により力を変換させる方法、または両方を組み合わせたものが存在する。

 僕は後者、最後に掛け声のように魔法の名前なんかを叫び、威力を増幅させるものだ。

 そしてどの方法にしろ魔法の発動には時間がかかる。

 目の前のGたちは魔法を使おうとする僕を見て一瞬動きを止めると一斉に羽を広げた。

「ひぃ。」

 僕は思わず悲痛な声を漏らす。

 そしてその僕の声と新たに聞こえたGの羽音に我慢できず、クイットが・・・目を開けてしまった。

 一瞬の間が空く。

 クイットの目が大きく見開かれた。

 そして次の瞬間。

「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 耳を劈くようなクイットの絶叫があたりに響き渡った。

 万事休す。

 魔法の発動どころじゃない。

 Gたちは一番見たくない足の生え際を見せ付けつつ、こちらに猛スピードで飛んできた。

 いっそ意識を手放そうか。

 僕がそう思ったときだった。

 目の前を黒い影がよぎる。

 そのスピードや形からして絶対にGではない。

 そしてその影がよぎった場所にいたGは気持ちの悪い体液を噴出し、倒れた。

 倒れたやつはしばらくは動いていたがそのうちに息絶え、動かなくなる。

 そしてその影は周りのGを一掃し、Gたちの進軍を止めるとふっと僕らの前に姿を見せた。

 だがクイットは目の前に現れたものに気づかず目をつむったままうずくまり、いやいやと首を振っている。

「お、おめぇは・・・。」

 そう、僕らの前に立つのは人種だった。

 だが背中から生えたコウモリの羽のようなものから人間ではないことが伺える。

 ボサボサの黒髪、頬に入った赤い模様、そしてすこし眠たげな赤と青、左右色の違う目。

 首元は布で覆われその布は口元まで隠している。

 モンスターの牙をペンダントのようにして首にぶら下げており、それが彼の神秘性を増していた。

 ところどころ引っかかれたように破れた服にだぶだぶとしたズボンといういでたち。

 服装は現代の若いお洒落な子と同じようだったが、雰囲気はまるで違い、歳は20歳くらいに見えた。

 そして彼はぼそりと

「動くな。」

 と言い、僕らに背を向けた。

 その声を聞きようやくクイットが目の前の人物に気づき、声をかける。

「ビシウス!!」

 だが男は返事を返さない。

 何とか立ち上がり駆け寄ろうとしたクイットだが、僕らと彼の間にはいつの間にか見えない壁ができていた。

「魔法障壁・・・。」

 僕がつぶやく。

 彼はきっと魔法を発動しようとしているのだろう。

 この部屋全体を包み込むような強大な魔法を。

 僕は彼から自分にはない魔力の渦を感じた。

 きっと彼は何か“特別”だ、そんな気がする。

 ここは邪魔をせず、これからの行方を見守るしかないだろう。

 そしてGたちはようやく我に返ったようで、またもバサリと羽を広げた。

 クイットが目を逸らす。

 男は、長くとがった悪魔のような爪の生えた両手を前へと突き出し、そしてゆっくりと握りこぶしを作った。

 彼の周りに魔力が渦を巻き、風が起こる。

 彼の表情は見えないが、Gの裏側を見ても何のリアクションも示さないところを見ると無表情のままこの動作を行っているのだろう。

 そして彼は軽く上を見上げた。

 もう既にGは目の前だ。

 だが彼は全く慌てもしない。

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