「かわいそうにねぇ。 まだ八つだって」
「あそこの川でしょう?」
「昨日の雨ですべったのよ。きっと・・」
「水かさも増してたっていうし」
ツルツルの白っぽい衣をまとった
男か女かわからない者と
薄桃色のワンピースを着た女の子が
白っぽい木の根元にしゃがみこんで
聞いている。
「わたしのこと?」
「そおだぁねぇえ」
「わたし しんじゃったの?」
「そおだぁねぇえ」
白黒の布がハタハタと揺れる。
黒いリボンをかけられた
女の子の写真が笑っている。
「あれはねぇ。 去年 動物園に行った時の写真だよ」
「ふうぅん」
「みんなで温泉に行った時のやつの方がいいのにな・・」
「ふうぅん」
写真の下にはたくさんのお菓子や おもちゃが積まれている。
「あれも わたしの?」
「そおだよぉお」
「食べてもいいかなぁ」
「いいけどぉ 味しないとおもうよぉ」
「あの赤いお茶碗のごはんが食べたい」
そういって 女の子は 赤い茶わんをもってきた。
お箸がまっすぐにつったっている。
「神様もたべる?」
「わたしはいいよ。 神様じゃないし。 わたしは観音」
「かんのん・・?」
「そお 観音。 じゃぁ そろそろいこうか」
「どこへ?」
観音は金色の玉を女の子の手に乗せた。
「これをね あそこの船のところの人に渡すんだよ。
そしたらね。 連れてってくれるからね」
「あの・・たこ みたいな人」
「おまえさんには たこにみえるんだぁ?」
「うん」
「このあいだの子は キリンだって言ってたよ」
さくさくと 草の原を船のところまで歩いていく。
「このお茶わん もっていっていいかなぁ」
「いいよ。 おまえさんのだもん」
女の子は突然ぽろぽろと泣き出した。
涙は おちると ころころと
白いたまになってころがった。
「かんのん。 わたし別に悲しくないのに泣いているよ」
「うん。いいのいいの。みんなね ここでね 泣くの」
観音は女の子の落とした 白い涙の玉を拾う。
「ほら これ。 この玉ね。ドロップ。
おまえさんの家族にちゃんと届けるからね」
「これ なめるとね。 少し辛くなくなるからね
家族に届けに行くのも わたしの仕事さ」
「そうなんだ・・」
「そうなんだよ」
「おかあさんによろしくね」
「はいよ」
「おとうさんにもよろしくね」
「はいよ」
・・・
「さよなら かんのん」
「さいなら」
観音は船が見えなくなるまで 岸に立っていた。
「小さな子の案内はいやだよねぇえ」
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