夢の終わり

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 世界は残酷だと母は言っていた。

そんな世界を見せたくないと父は生まれた瞬間から私に目隠しをしている。だから私は世界を見たことがない。自分の顔も母の顔も父の顔も家の中も何も見たことがない。

取り外そうとも考えた事がない。

父とは母優しいから、その父と母を信じてるから取り外そうとなんて考えたこともなかったの。

でもある時、素敵な人に出会ったの。

その人はね、誰よりも私に触れてくるの。

頬を触れたり、髪を触れたり、それとびっきり優しく目に触れてくる。

話もした。

ちょっと哀しい小説の話だった。

「例えばさ、こんなこと思ったことない?本当は長い長い夢の中にいてお母さんもお父さんも本当はいなかった。目を開けてみれば誰もいない真っ白な空間に自分しかいなくて……。

……気にしないで。小説の話だから。

その小説はね、世界が破滅してしまった後に人間が二人だけ残るんだ。一人は大切な人を失った悲しみで気が狂って、もう一人の男は彼女を愛していたからおかしくなった彼女を……狂おしいほどに愛していたから、死ぬまで永遠の夢を見る機械に閉じ込めるんだ。

「「僕は時々君の名前を呼ぶ。けど、どうか目覚めないで、どうか君は夢の中で幸せでいて」」

その小説の最後の言葉。」

彼はいつもその小説の話を私にするんだ。

私自身その小説が大嫌いだった。だってそれは彼が泣きそうな声で何度も何度も語るから。

大好きな彼が泣きそうになるから大嫌いだった。

私は彼が好き。

優しい手が好き。優しくて私を触る手が好き。声が好き。低くて澄んでて優しく私を包む声が好き。

彼は語り続けた。

そしてついに彼は泣き出してしまった。

私は彼に触れようとするのに何処にいるのかわからなくて、私の手は宙をかく。

思いついたように私は目隠しに手をかけた。すると父さんがその手を掴んだ。

「いけないよ、縫。夢から覚めたら残っているのは彼だけだよ?」

もう一方の手を母が掴んだ。

「ここにいなさい。そうすれば縫はずっと幸せで居られるから」

私は両の手を振り払った。

「嘘なんていらない!!」

私は目隠しをとるとそこは白い機械の中でガラス張りの正面には私の名前を呼びながら泣いている彼がいた。

私は開閉のボタンを押して、彼を抱きしめた。

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